フランス・ギャルのphilips時代(アイドル時代)の音源について、主にモノラル/ステレオ・ヴァージョンの違いを、以下にまとめてみたいと思います。基本的にはCD化された音源についてのみの考察となりますが、その点はご了承下さい。
フランス・ギャルの再発CDは、最初の”赤ベスト”にはじまり、これまで相当数のものが発売されていますが、音源が重複する分を除けば、重要なものは以下の3種類になります。これ以外のCDはすべてこれらのCDと音源が同じなので、基本的には無視します。
①POUPEE DE SON(4CD-BOX) 3145-13173-2(1992.7)
②MASTER SERIE -FRANCE GALL- 3145-59209-2(1998)
③FRANCE GALL (3CD LONG-BOX) 589 343-2(2001.11)
この内、③はフランス・ギャルのphilips時代のコンプリート・ボックスと言えるもので、発売当時に話題になりましたが、このCD-BOXをマスターと考えて、①②収録ヴァージョンとの違いについて考察していきたいと思います。
LONG-BOXに収録された音源の基本方針は、察するに”フランス・ギャルのphilips時代の作品を初出の形で網羅する”ということにあると思います。収録曲のほとんどはモノラル・ヴァージョンですが、これはフィル・スペクターの”Back to Mono”にも匹敵するような迫力をもった大変素晴らしいもので、一般的に初期フランス・ギャルのCD音源は”音が悪い”というのが定評でしたが、このLONG-BOXにはそんな心配は全くありません。
決定盤と言い得るCDが出たことは素晴らしいのですが、ここで一つの問題が起きました。LONG-BOXが初出のヴァージョンを基本にしたため、4CD-BOXに入っていた、ステレオあるいは疑似ステレオのヴァージョンが、逆に貴重になってきたということです。以下は4CD-BOXに収録されているステレオ/疑似ステレオ・ヴァージョンのリストですが、中には判別が微妙なものもありますので、その辺りはご了承ください。
①トゥルー・ステレオ・ヴァージョン収録曲
Nounours
Bonne nuit
Celui Que J'aime
L'echo
*サビで歌を追いかけるエコーが入っていません。
Tu N'as Pas Le Droit
Il Neige
Oh! Quelle Famille
Les Lecons Particulieres
J'ai Retrouve Mon Chien
②半ステレオ(?)の曲
Deux oiseaux
*メインの部分は中央だが、管楽器類の音は完全に右チャンネルのみ。また冒頭のフルートのリフレインが2回目だけというヴァージョン違いです。
Et des baisers
*同じくメインは中央、サビのコーラスが左のみ(右はエコー音)
Bonsoir John John
*途中までわかりませんが、ストリングスが左、ギター、オルガンが右です。
③疑似ステレオと思われる収録曲(このA.B.C.の区別は微妙です。)
A.左チャンネルに右チャンネルの音のエコーを入れて疑似ステレオ化
Jazz A Gogo
Les Rubans Et La Fleur
N'ecoute Pas Les Idoles
Ne Sois Pas Si Bete
Laisse Tomber Les Filles
*このヴァージョンは、なんとヴォーカルがシングル・トラックです。(モノはダブル・ヴォーカル)
Christiansen
Poupee de cire, poupee de son
Sacre Charlemagne
Le temps de la rentree
*一聴ステレオのようだが、左チャンネルはエコー音のみ
Attends ou va-t'en
*上に同じ
Mon bateau de nuit
*これも上に同じだが、ストリングスが右チャンネルで、モノラル・ヴァージョンよりよく聞こえる。左のエコーの処理もGOOD。
L'Amerique
On se ressemble toi et moi
*Mon bateau de nuitと同じくストリングスがよく聞こえる。音の広がり感もばっちり。
B.右チャンネルに左チャンネルの音のエコーを入れて疑似ステレオ化
La Guerre Des Chansons
C.左右にエコーを入れて疑似ステレオ化
Pense A Moi
Ne Dis Pas Aux Copains
Le coeur qui jazze
Nous ne sommes pas des anges
Baby Pop
Teenie Weenie Boppie
*なぜか疑似ステです。ステレオ・ヴァージョンでは左に聞こえるギターのカッティング音が全く聞こえません。
④ミックス違いのステレオ曲
Les Sucettes
Quand On Est Ensemble
*この2曲はLONG-BOXのヴァージョンとはミックスが違うステレオ。LONG-BOXのヴァージョンでは、リズム隊が左、ストリングスが右ですが、このヴァージョンではリズム隊は中央で鳴っています。LONG-BOXのヴァージョンに比べ、全体にソフトな印象。ただ、Les Sucettesはマスターテープの状態が悪く、音が回転しているような感じです。
続いてMASTER SERIE盤ですが、一見単なる編集盤かと思いきや、このCDには大変貴重な2つのテイクが含まれています。また、LONG-BOX発売以前では、他の編集盤には含まれていなかった初CD化の3曲が含まれており、その点でも貴重な一枚だった訳です。
⑤トゥルー・ステレオ・ヴァージョン収録曲
Sacré Charlemagne
Laisse Tomber Les Filles
*この2曲は完全なステレオ・ヴァージョンです。Laisse Tomber Les Fillesは、モノ・ヴァージョンと同じくダブル・ヴォーカルです。
⑥番外編
2000年に発売された日本盤CD『夢みるフランス・ギャル 〜アンソロジー '63/'68』に収録された日本語ヴァージョンの2曲は、ステレオ・ヴァージョンです。特に”夢見るシャンソン人形”のステレオ・ミックスは分離もくっきりと素晴らしく、日本語ヴァージョンではありますが、ステレオのシャンソン人形を体感することができます。
⑦さらに番外
Bébé requin
*左のトラックだけ聞いてみてください。演奏と完全分離でフランス・ギャルの声だけ楽しめます。
Chanson Pour Que Tu M'aimes Un Peu
*同じくイントロの部分、右のトラックだけ聞いてみてください。フランス・ギャルの咳払いが聞こえます!
以上、もっと細かく聞けばいろいろな相違点があるかもしれません。一般にはビートルズなど、60年代のアーティストの作品には、ステレオ/モノでミックスやヴァージョンが違うものが多数有り、マニア心をいたく刺激しますが、我らがフランス・ギャルについても、60年代のアーティストの特権として、このような楽しみを与えてくれるのはうれしい限りです。また、60年代の日本盤LPで確認できるこの他の曲のステレオ・ヴァージョンは未だにCDされておらず、もはや我々の願いは、60年代当時の4枚の日本盤LPの、ステレオ/紙ジャケによる完全復刻しかありません!ユニバーサルさん、どうかご検討をお願いします。
『Poupe de Son [Best of] [Box set]』
