どの時期も素敵なんですが、特に初期の初々しいフランス・ギャルにはぐっときますよね。デビュー・シングルのB面に収録された「Pense à moi」です。60年代当時のレコードのリリース方法は、SP(AB面に1曲づつの2曲入り)、EP(AB面に2曲づつの4曲入り)、10inch、12Inch(LP)の4パターンがあって、この曲は以前紹介した「Ne Sois Pas Si Bête」とともに、フランス・ギャルのこの4種の最初のレコードの全てに収録されています。「Pense à moi」、すなわち私のことを思って!と乙女の願いですが、曲調はジャジーで大人っぽい雰囲気ですね。実はフランス・ギャルはジャズが好きで、オーディションなどでデイブ・ブルーベックの「テイク・ファイブ」をスキャットで歌ったりしていたようです。そういえばこの「Pense à moi」と「take 5」は微妙に似てますね。この曲では中間部で見事なファルセットによるスキャットを披露していますが、これが非常に音程が危うい感じで、そこがまた可愛いんだなあ。実に心得た演出です。
さて、このファルセットなんですが、実はフランス・ギャルは、もともとが子供みたいな中音域オンリーの声質のせいか、アイドル時代の殆どの曲で音程が高くなると必ずファルセット、すなわち裏声を使って歌っています。かなり自然な感じなのでよく聴かないと気がつかない曲もあるんですが、曲中における地声から裏声への移行はそのくらいスムーズです。この「Pense à moi」で云えば、最初のヴァーズの”Ne prends pas cet air là Quand tu n'es pas avec moi Et si tu t'ennuies”までが地声で、次の”pense à moi”は裏声です。同じフレーズが続いて、Bメロの”Pense à nos vacances au ciel bleu〜”の部分は全てファルセットで、先ほども云った通り中間部のスキャットもそうです。一番有名な「夢見るシャンソン人形」でもBメロの”Mes disques sont un miroir〜”の部分は実は裏声で、”〜éclats de voix”の部分でもとに戻ります。だから何だと云われればそれまでですが、フランス・ギャルはこのファルセットを多用することによって、歌唱力不足と声量不足を補い、尚かつこのファルセットの危うい音程による歌唱によって、少女らしい優しさとか儚さを逆に演出することに成功しているのです。このファルセットがなければ、フランス・ギャルの歌はこんなにも魅力的ではなかったかも知れませんね。
