若い美男美女というのはいいもんですねえ。その上、二人は夫婦で、ともに音楽をやっていて、生活の全て、人生のすべてを共有しているわけですから、なおさら羨ましいですね。ところが運命というものは時として非常に残酷です。この若き美しき妻からこの素敵な良人を、オートバイの事故で一瞬にして奪い去ってしまいました…。
さて、60年代の夫婦フォーク・デュオ、Mimi & Richard Farinaです。奥さんのMimiはJoan Baezの実妹で、二人が結婚したのは1963年ということですから、実にMimiが17歳の時です。この夫婦デュオは65年に2枚のアルバムを発表しましたが、66年に、小説家でもあった夫のRichardが、その小説の完成パーティに向う途中でバイク事故に合い亡くなってしまいました。なので活動時期は非常に短く、その後Mimiは数枚のアルバムをリリースしてはいるものの、目立った活動は殆どしていないので、どちらかと云えば知る人ぞ知るアーティストであります。この夫婦デュオ、名前表記こそMImiが先ですが、そこはレディファーストということからなのか、実際に音楽を聞いてみるとメインは夫のRichardでMimiはあくまでもサブという感じです。私にしてみれば、もちろんこのデュオの最大の魅力はMImiであって、MImiのその2番手のポジショニングと、見た目の美しさと声のきれいさは最大限の賞賛に値すると思います。ただし、同時にJean Richieファンの私としては、Richardがダルシマー奏者であるところにも興味を覚えます。このダルシマーという楽器、一般にはまったく浸透しておらず、私もJean Ritchieを知るまではこんな楽器があることさえ知りませんでしたが、実際に聞いてみるとその軽快できらきらした音色がすっかり気に入ってしまいました。Richardのダルシマーも軽快この上なく、聞いていて非常に疾走感があるというか、通低音の上で自在に上下する音にはグルーブ感さえあるのですが、そのダルシマーの演奏もさることながら、さらに特筆すべきはRichardのボーカルで、ニヒリスティックであるのに優しいというか、どことなくNick Drakeを思い出させます。お互い夭折したフォーク歌手という点も共通していますが、両者のその歌声からは似たような匂いが漂っているような気がします。
先にも云った通り、活動時期が短かったのでこの夫婦デュオの音源は少ないです。オリジナル・アルバムの2枚に、Richardの死後に発売された3枚目のオリジナルになる予定だったアルバムの計3枚があるだけで、現在この3枚のアルバムはボーナストラックを加えて、3CDセットとしてリリースされています。余談ですが、この3CDセットの最後のトラックには65年のフォーク・フェスティバルでの、Jean Ritchieと彼等の貴重な共演が収録されていて、そこではJean Ritchieのダルシマー伴奏による定番曲の「Shady Grove」が3人の演奏で収められています。

