2009/04/11

孤独でやせっぽちの少女のための夜想曲


 Young Marble Giantsを聴いていると、痩せっぽちで孤独な少女のイメージが思い浮かんできます。リズムマシーンを下地にして、ギター、オルガン、ベースをチープかつストイックに構成した演奏は、まるで少女の骨格のような針金のような繊細さと脆さを持っています。そこに感情を抑えて淡々と歌うAlison Stattonの声が響くと、夜、ひとりの部屋で物思いに耽る少女の、そのまっすぐな瞳の奥にある脳内の純な思考を垣間見ているような気がしてくるのです。



 70年代後半のパンク・ニューウェーブのムーブメントは、音楽におけるプロとアマチュアの垣根をなし崩しにしました。高度な演奏技術がなくても、既成の概念にとらわれない自由な発想で音楽を創出できれば、それをインディーズのレーベルを通じて世に送り出すことが可能になりました。そうした中でYoung Marble Giantsも誕生し、当時のイギリスを代表する自主レーベルの一つであるRough Tradeからレコードをリリースしたのです。そしてそれこそが、発売から30年近く経った今でも、ともて瑞々しく、ひりひりとした思春期感覚を失っていない名盤『Colossal Youth』なのです。



 ボーカルのAlison Stattonは、1959年生まれということですから、この頃、二十歳になったばかり。お下げ髪姿にまだ少女っぽいあどけなさが残りますが、私がYoung Marble Giantsに感じる、孤独な部屋で物思いに耽る少女像というのは、彼女の佇まいや声質に負うところが大きいと思います。残る二人のメンバーはPhilip MoxhamとStuart Moxhamの兄弟で、男性二人に女性一人という青春の構図もYoung Marble Giantsの音楽性に見事にマッチしていると思います。



 さて、Young Marble Giantsは『Colossal Youth』という思春期の少女のスナップ写真のようなアルバムを1枚だけ残し、儚くそして潔く解散します。その後、PhilipとStuartのMoxham兄弟はThe Gistを、Alison StattonはWeekendというグループを結成し、音楽活動を続けます。



 聴いていただけばお分かりの通り、Young Marble Giantsに比べWeekendでは、当時の流行だったファンカラティーナ(ラテンっぽいファンク)やボサノヴァの要素を取り入れて一気に華やかなサウンドとなっています。一人の部屋に孤独に佇んでいた少女は、自分の殻を破って外の世界に一歩踏み出した、というわけです。陳腐な喩えですが、地方の高校生だった少女が、東京の大学に合格して一人暮らしを始めた、とった感じでしょうか?—その証拠にこの映像でのAlison Stattonは、髪型も服装も急に大人っぽく変身しています。
 Young Marble Giants同様、このWeekendも長続きせず、数枚のシングルと1枚のアルバムと1枚のミニライブアルバムを残して解散してしまいました。その後Alison Stattonはデュオやソロで音楽活動を続けていますが、最近ではまるで学生時代の同窓会を開くようにYoung Marble Giantsを再結成してライブなどを行っているようです。

 思春期の少年少女がその未熟さ故に持つ煌めき、その奥で蠢くように潜んでいる孤独の翳りのようなものが、Young Marble Giantsの音楽には感じられます。若い大理石の巨人というグループ名が示す通り、若き芸術家たちが心血を注いで彫ったこの偉大な彫刻作品は、今後も青春の傑作として永遠に語り継がれていくことでしょう。

『Colossal Youth』