まずは、云わずと知れたピチカート・ファイブ。その後は渋谷系などと云われて人気者になりましたが、デビュー当時はこんな感じでした。MIKADO風のチープな打ち込みサウンドがいかにも80’sですが、この初期のピチカートの最大の魅力は、何と云っても初代ヴォーカリストの佐々木麻美子の声です。完全にかまとと風のウィスパーで、同じく佐々木麻美子がヴォーカルを担当した彼等の1stアルバム『カップルズ』は、流行先取りのソフト・ロック・テイスト溢れる名盤でした。このPVは今見るとかなり恥ずかしいですが、イミテーションぽい空疎な色合いも80’sっぽいです。
続いてはデイト・オブ・バース。デビュー作はインディーズのPORTRAITから出た10inch『Around + Around』で、この作品は海外などでも発売されました。その後はメジャー・ブレイクして興味の対象外になってしまいましたが、『Around + Around』は大好きで当時よく聴いた作品でした。このサンプラーの音で構成されたサウンドも懐かしい限りですが、アート・オブ・ノイズっぽいオケヒに加えて、包丁で野菜を切る音などもサンプリングしてそれをリズムトラックに使うなど、インディーズならではの家内制手工業っぽい音作りが楽しい曲で、さらにドリーミーでふわふわした感じのNoricoのヴォーカルが、この曲のかわいいメロにピッタリでした。
次は、ディップ・イン・ザ・プール。80年代のカリスマ・ファッション・モデルだった甲田益也子がヴォーカルで、彼女は「永遠の女性とはおのずから美少年的なるもの」という稲垣足穂の言葉がぴったり当てはまるような、美少年的な美しさを持った女性でした。このPVでも、トレーシー・ソーンっぽいショート・ヘアで、その少年美がさらに際立ちます。音楽の方も天使的というか天国的というか、透明感のある繊細なシルキータッチのサウンドで、優しく包み込まれるような、それこそ深いプールの底に潜って、そこから太陽を眺めているような感じがします。そういえば彼女たちもRough Tradeからアルバムを出していましたね。
続いてD-Day。当時メジャーデビューはしませんでしたが、結構アイドル的な人気があって今でもファンが多いみたいです。この曲は1984年にインディーズのバルコニーからリリースされた『くっついて安心』というかわいいタイトルのオムニバスに収録されたものですが、今聴いても全然OKだと思うのは私だけでしょうか。かわいくてキャッチーでCMなんかに起用したら人気が出そうですよね。私も久々に聴いたのですが、頭の中で早速「Peaches, Peaches...」とリフレインが始まりました。
次は、ほとらぴからっ。この名前、ちょっとぎりぎりな感じで、こういうセンスも80'sならではですが、因みに”ほとら”も”ぴからっ”も蛍の地方名(方言)だそうです。林海象のデビュー映画『夢見るように眠りたい』に主演している佳村萌の音楽ユニットで、ちょっと不思議系で天真爛漫な感じの音楽を聴かせます。この曲は「天女」というタイトルですが、『夢見るように眠りたい』で佳村萌が演じた桔梗という女性は、確かに天女のような印象がありました。映画そのものは私は評価しませんが、佳村萌の姿を永遠にフィルムに焼き付けたという点においては重要かと思います。
最後は葛生千夏です。思えば80年代を通じて、女性ヴォーカリストではこの方が一番好きだったかもしれません。ポーやテニソン、キーツなどの詩に曲をつけて歌うという時点ですでに合格点、さらにそれが古楽〜バロック初期の作曲家の作品のような楽曲とアレンジで、加えて月の硬質な煌めきを連想させる冷たく強靭なヴォーカル・スタイルと、私にはかなりストライク・ゾーンでした。85年と86年にシングルを1枚ずつ発表し、87年に徳間のレベル・ストリート・シリーズのオムニバス『サム・ガールズ』に参加、CDシングル『ふるさと』を出した後、91年に1stアルバム『THE CITY IN THE SEA』、92年に2nd『THE LADY OF SHALOTT』をリリースしました。それが彼女の作品のほぼ全てになりますが、確認したら我が家には今でも全部ありましたね。そのような例外は彼女だけです。後にシャーリー・コリンズの『Anthems In Eden』や『Love Death and The Lady』を聴いた時に、ああ、葛生千夏のルーツはこれだったのかと、合点がいったのもその例外の一因かもしれません。
